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「奪取」 真保 裕一(著) [Books]

dash.jpgあらすじ---偽札造り、それは究極のだましゲーム。そのお札を使ったところで、誰が被害者になるわけでもないんだ。おれの手を放れた紙幣は、また次の誰かの手へと伝わっていく。誰も気づかず、どこにも被害者はいない。札を造り上げた者だけが勝利者となる。・・・おれは決めたぞ。この先何年かかるか分からない。けど、必ずこのゲームに勝利してやる!---

まさに秀逸!と誉れ高い小説「奪取」。文庫本の上下巻合わせて約1,000ページに及ぶ長編ですが、ユニークでスピード感あるストーリーテリングのおかげで、途中で飽きることなど全くなし。本好き名利に尽きる幸福感と共に読み終えました。いやーもお、満足満腹です^^
製版および印刷に関する技術の粋を凝らし、セキュリティ機能も随所に施してある世界最高レベルの紙幣、すなわち日本の一万円札。よんどころない事情から、無謀にもその偽札造りを実行しようとする4人組。その手際やいかに・・。
まぁ、ディテールを突けば、ややリアリティに欠けるとこあれど、そんな些細な齟齬など木っ端微塵に吹き飛ばされるほど大胆で力強いプロセスを、頭から尻尾の先まで存分に楽しませてもらいました。だましだまされ、くるくる攻守が入れ替わる巧妙な流れは、ニューマン&レッドフォード主演の映画「スティング」を彷彿とさせます。
さて、偽札造りチームの魅力ある4人。もし、映画化されるとしたら、キャスティングは誰がいいかなぁ・・まず、パソコンおたくで頭が切れる道郎はTOKIOの「国分太一」さん、心優しき力仕事担当の雅人は同「長瀬智也」さんでしょ。で、ボーイッシュな女子大生の幸緒ちゃんは「鈴木 杏」さん、ひょうひょうとして頼りになる水田じぃは「堺 正章」さんかな。
漫画を原作とした映画ばかり公開されてる日本の映画業界。それが悪いとは言わないけど、なーんか安直感は否めず・・だって、絵コンテが出来上がってるようなものだし。「奪取」のようなスゴイ小説を映画化しましょうよ!ねえ。

ついては、活字中毒と誉れ?高い編作者の読書遍歴から選ぶベスト20にランクインです。その内訳に興味ある方は、下の「続きを読む」からどうぞ。

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「カラフル」 森 絵都(著) [Books]

colorful.jpgあらすじ---ぼくは魂になった。もう、自分が誰で、何で死んでしまったかさえ分からない。さらば、この世。あの世へと昇っているとき、天使に呼び止められた。何でも、生前の罪により、ぼく(魂)は輪廻のサイクルから外されたらしい。そんなこと覚えてもないのに・・まぁ、いいか。
でも、幸運?!なことに、天使業界の抽選にあたって、輪廻復帰への再挑戦のチャンスを得てしまった。それは、自殺を図った某少年の体にホームステイしながら自分の罪を思い出さなければならないってこと。試練だ・・でも仕方ない、やるしかない。
ぼくはこの世へ戻り、少年として過ごし始めた。そして、見知らぬ家族や友人たちの欠点や美点が見えてくるにしたがって、ぼくの試練、つまり少年の人生が、意外な方向へと進み始めた・・・。---

既に亡くなっている人の魂たちが、神様から起死回生のチャンスを与えられる。すなわち、もう一度現世で修行を積んでくるべし!というストーリーは、以前に読んだ小説幽霊人命救助隊」とほぼ同じ。でも、物語としての味付けがずいぶん違っている。
「幽霊・・」は"人が死ぬ"ことに重きを置いて、特に自らの命を絶ってしまうことの無意味さと罪深さを説くことが物語の根底にあるように思う。対して「カラフル」は、"人が生きてゆく"ことにスポットを当てている。
人はこの世に生まれたと同時に母親と出会う。初めて自分以外の人と会うことで、絆という名の「線」で結ばれる。それ以降、家族、親戚、仲間、友人、知り合いと次々に線を結んでいき、ふと気付くと線と線が複雑に結び合わされた巨大な幾何学模様の中に立っている。いつの間にか無数の人たちと繋がっている自分。それって、大事で掛け替えないことじゃない?
ほら、線から面へ視点を変えてみようよ。ついでに周りの幾何学模様に色を塗ってみよう。いじめっ子たちとの線に囲まれた枠はグレーに、家族との枠は・・安心カラーの緑かな、好きな人との枠はピンク、なんて。どんどん塗りつぶしていこう。ほら、ただの模様だったのが、ステンドグラスのようになってきたじゃないか。
え、未だ無色の枠にどんな色を塗ったらいいか迷ってしまう?何だか怖いって?それならば、近くの塗色済みの場所から、もう一度じっくり無色地帯を眺めてごらん。周りとのバランスやデザインを考えるうちに塗りたい色=結びたい関係が見えてこないかな。だって、世界はこんなにもカラフルなんだもの。黒(=Death)以外だったら、自分の好きなように色付けしていいのさ。
・・・というような小説です^^ 対人系しがらみに滅入ったり、うんざりしたときに読むと元気が出ます!
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「ユニット」 佐々木 譲(著) [Books]

unit.jpgあらすじ---十七歳の少年に妻を凌辱され殺された男、真鍋。警察官である夫の家庭内暴力から逃れて家を飛び出した女、祐子。それぞれに深く苦しみ、別々に彷徨ってきた二人は、やがて同じ職場で働くことになる。ある日、犯人である少年の出所を知った真鍋は復讐を決意する。一方、祐子にも夫の執拗な追跡の手が迫っていた。錯綜を繰り返す二人に未来は拓かれるのか・・。暴力の被害者の救済、さらに家族のあり方を問う長編。---

本書を紐解くにあたり、少年犯罪、そしてDVという社会的問題をテーマにした小説ということで、かなーり重いストーリーなのだろうな・・救われない結末なのかもしれない・・と、覚悟してました。でも、その予想は外れ。
真鍋と祐子、まっとうに生きてきた二人に加えられた理不尽かつ強大な暴力・・その後遺症と精神の泥濘から浮上すべくもがき、様々な苦難を乗り越えた末に再生を果たし、ユニット=相棒として新しい人生を歩み始めるまでを描いた、勇気と希望を与えてくれる物語なのでした。
それにしても恐ろしかったのは、未成年の殺人犯"川尻"の身勝手な思考回路でした。たった7年で出所してきた川尻は、社会になかなか受け入れられず。川尻の犯罪があまりにも残虐非道だったため、世間の記憶から消え去っていない報いなのですが、当の川尻はそう考えないわけです。
「大した事件を起こしたわけじゃなし」「服役して、もうチャラになった」・・「なのに職探しは面接で断られてばかり」「そんな昔のことを皆が覚えてるのはおかしい」・・「"誰か"がオレを邪魔している!」・・てことで、安直に再び非道へ走ると、いやはやウマシカ。
この"誰か"とは、とどのつまりは言葉だけで漠然として実体が無いもの。ようするに、責任転嫁するための架空の相手。ぶつかった問題の原因を真摯に探ろうともせず、粘り強く解決すべく辛抱と努力を怠る者、ナマケモノほど使いたがる詭弁の象徴ですな。
読み終えて、つくづく思いました。まっとうな常識と行動をもって生きている、地道に生きていこうとしてる人にのみ、「より善き未来」という活路が拓かれていくのだと。うむ、この機会に改めて肝に銘じておこっと。
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「メリーゴーランド」 萩原 浩(著) [Books]

merrygoround.jpgあらすじ---過労死続出の職場を辞めてUターン転職したのが9年前。啓一は、田園都市の市役所勤務である。
愛する妻に子供たち、親方日の丸の公務員、あぁ毎日は平穏無事・・・だったのに、出向ですか、この俺が?第三セクターで、あの超赤字テーマパークを再建せよ?!どうやって??でも、もう一人の自分が囁いたのだ。“いっちょやったろうぜ。どかん!といっちまえよ”。
かくして、平凡なパパの孤軍奮闘の結末やいかに・・・。笑って怒って、時々しんみり。ニッポン中の勤め人の皆さん、必読です。---

この小説を読む限り、「出る杭は(徹底的に)打たれる」、「長いものには(積極的に)巻かれる」、「朱に交われば(身も心も)赤くなる」、「(一般市民の声には)馬耳東風」・・・やっぱすごいわ、地方公務員様って^^;
市営テーマパークの期末決算にあたって、「次長、入場者が増加傾向にあり、昨年度の売上げを超過する見込みです」。「なにぃ?係長、そんなことになったら、"昨年は何をしていたんだ!"と追求されるじゃないか、そりゃまずいぞ」。なんてエピソードもあったし。
さて、売上向上は二の次三の次、地域文化への貢献という大義名分のもと、ただ開園していれば良しのテーマパークがあったとさ。億単位の赤字経営だけど、でも、そんなの関係なーい。だって、税金が補填してくれるもの。でもさ、市民オンブズマンがうるさいから、「リニューアル推進課」でも新設してメイモク的タテマエ的な姿勢だけでも見せておこうかな。そうしよう、そうしましょう。
・・てなところに出向してきた普通の中堅公務員、啓一。始めはやる気もなく流されるままだったが、燻っていた広告屋魂が再燃してきて、本格的な広報活動に乗り出すことに。しかーし、そこはお役所だもの、四面楚歌に陥ってにっちもさっちもど~っちもブルドッグ♪状態に。
そこからがこの小説の面白かったところ。共生と談合と妥協という柵から抜け出して、啓一自身の人脈とコネクション、そして甲斐性までも総動員した再建計画を立案せり。さぁ、ボトムアップでGo!Go! その綱渡り的ながら突拍子も無い過程にハラハラドキドキわくわくしましたさ^^ はたして、その成否と結末やいかに・・というのは、ここでは語らずにおきましょう。ただ、読み終えた際に、以前に観た映画『県庁の星』を思い出しました。
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「ガダラの豚」 中島 らも(著) [Books]

gadara-1.jpg あらすじ---アフリカに関する民族学者・大生部(おおうべ)多一郎は、テレビの人気タレント教授であり、彼の著書「呪術パワー・念で殺す」は、超能力ブームにのってベストセラーになっていた。しかし、大生部にはかつて、東アフリカでの調査に同行した幼い長女を事故で亡くしたという辛く悲しい過去があった。それ以来、妻の逸美は神経を病み、大生部自身も酒に浸るような毎日を送っていた。
そんな大生部に、アフリカのテレビロケへの出演依頼が舞い込む。迷いに迷ったあげく、大生部は逸美、長男の納、研究助手の道満(どうまん)、スプーン曲げ青年の清川、テレビのスタッフ6名と共に海を渡った。
多少のハプニングがありながらもアフリカでの旅と撮影は順調に進み、一向はケニアとウガンダの国境沿いを北上して、スワヒリ語で「13」という意味の不吉な村、クミナタトゥに着いた。そこは、邪悪な大呪術師バキリが村民を支配する呪われた地だった。そして、大生部たちは最大の禁忌を犯し、バキリの逆鱗に触れてしまう。戦慄の物語の幕開けだった。---

この小説では、「宗教と哲学」、「呪いと祈り」、「超能力と手品」の各々がサブテーマとなり、密接に関係しつつ絡まり合いながら物語が展開していきます。それぞれの違いがわかんなーい。説明して?と、問われても、僕はあいまいな説明しか出来そうにないです。でも、この小説を読み終えて、感覚的には理解できたような気がします。それは、表裏一対、光と影のような関係にあるということ。
例えば、こう言い換えたら分かりやすいでしょうか・・。何かを望んで、それを強く念じる、または唱えたとします。それが、「より良く生きたい、幸せになりたい」であれば、それは祈りです。「あいつが憎い、いなくなってしまえ」であれば呪いですね。望む内容が陽か陰の違いだけで、行為そのものは何も変わりません。
そして、念じて唱えることをカリスマ的肖像に向かって行えば宗教、真理を望んで黙々と問答し続ければ哲学と言えましょうか。え、超能力と手品?ふふん^^タネがあると分かって見るか見ないかの違いだけで双方ともトリック。要するに不思議な現象を見たい、奇跡もどきを見たいという人の望みを視覚的に表現したパフォーマンスでしょう(ちょっと乱暴かな)。
かくして、人は何かしらを望んだとき、願望、展望、欲望、希望、羨望などの代替行為として、意識せずとも念じ唱えているのですね。
さて、この小説に脈々と綴られているのは、この念じ唱えること、つまり「祈り、呪う」という行為の恐るべき効果・効用です。高じていくに従って、自身の肉体に物理的に作用し、生活環境や人間関係に秩序と混沌を及ぼし、冠婚葬祭を支配する要因になり、さらには地域社会の司法や行政を動かしていく機能にまでなる。読み進めるうちに、祈りと呪いのもたらす克明なメカニズムが分かってきます。中途半端な解説書を読むよりも宗教や呪術について、よーく理解できるのです。
とは言っても、小難しいゴタクが並び書かれている訳ではありません。オカルティズム(隠されたもの)感に溢れていて、続きはどうなるの?と、わくわくするストーリー、その中にユーモアも散在する、よく練り上げられた大エンターテイメントなのです。ぜひご一読あれ。
しても主人公の大生部教授。僕の中では、その憎めないキャラと愛すべき風体から荒俣宏さんのイメージなんですよねぇ^^
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「ペトロバグ-禁断の石油生成菌」 高嶋 哲夫(著) [Books]

petrobug.jpgあらすじ---バイオテクノロジーの天才科学者である山之内明が発明した石油生成菌「ペトロバグ」。それは、あらゆる物質を分解して高品質の原油に変えるという奇跡のバクテリアだった。この大発明に脅威を感じた石油コンツェルンとOPECは、双方とも山之内の拉致または殺害、およびペトロバグ略奪の指令を発した。さらに、研究が進むうちにペトロバグの猛毒性が明らかになり、恐怖の殺人生物兵器でもあることが判明。山之内は暗殺者に追われながら、科学者としての重大な決意を固める。---

中東に埋蔵されている原油は、あと40年ほどで枯渇すると言われます。現在、石油に代わる様々なエネルギー資源が模索され、一部は実用に至っているものの、もしも今日限りで石油が無くなったら、人々が文化レベルを維持できるのは、石油の備蓄分が切れるまでの4カ月間と言っても過言ではないでしょう。
さて、そんな背景を鑑みると、あらゆる物質、ゴミさえも原油に変えてしまうバクテリアが発見されたとしたら、無尽蔵の油田を掘り当てたも同然、まさに人類の活路に光明をもたらす救世主(菌だけど・・)の降臨です。でも、資源問題が解決してめでたしめでたし・・と、いうほど単純なお話しではなく、石油出なけりゃ砂漠の辺境である(と、首相自ら公言する)中東諸国、そして石油売買で大儲けしてる独占企業群である石油コンツェルンにとっては、文字どおり死活問題なのです。ゆえに、国家生命やら企業生命を賭して妨害工作に走ることは火を見るよりも・・。
ペトロバグによって、世界経済および国家間の力関係が根底から覆されるとき、どんな混沌が地球上を席巻していくのだろうか・・そこに着想された高嶋さんは、お見事!素晴らしいと思うのです。なのですが、そのせっかくのプロットが小説へと書き下ろされたら、残念ながらチャチかった^^:
日本国内狭しと繰り広げられるスパイ合戦、官民軍が入り乱れて吹き荒れる策謀と陰謀の嵐は、やがて世界各国へ飛び火して紛争と恐慌を巻き起こしていくー・・くらい壮大なスケールを予想してました。それが実際は、一研究所の一研究者、vs.チンピラ然とした殺し屋との抗争程度のストーリーに終始してしまうとは。さらに、結末が無理くりな展開の浪花節というのも、重ねがさね幻滅なのであります。高嶋さんの他の小説、「イントゥルーダー」と「ミッドナイトイーグル」は、とても良いのですがのう・・残念。
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「あの虹に、ティー・ショット」 喜多嶋 隆(著) [Books]

golf.jpgあらすじ---わたしはユウ、16歳。ハワイ生まれの日系五世。お爺ちゃんのおんぼろゴルフ練習場で働きながら、サーフィンをする毎日だ。ひょんなことからジュニアのゴルフ大会に出ることになったけど、あるのは錆びた3本のクラブだけ。伸びたTシャツにゴムゾウリ姿はちょっと浮いてるけど、腕には自信アリ。雑草育ちの少女がゴルフ界に旋風を巻き起こす、痛快青春小説。---
一服の清涼飲料のような爽やかな持ち味は健在です。でも・・この小説に限っては、「ブラディ・マリー」シリーズや「流葉爽太郎」シリーズに比べて、何か物足りない。
そもそも、小説の世界でゴルフのコンペ(試合)を描くのは難しいんじゃないかなー・・。映像であれば緊迫するであろう、「最終18番ホール、ここまではワン・アンダー、タイでトップをキープしている。パー・ファイブのロングホール、わたしはドライバーを選んだ。ティを高めにセットして集中・・ゆっくりリフトアップ・・思い切り振り下ろした。カキーン!という音を残して、ボールがフェアウェイへ飛び出していった」というシーンであっても、文章にすると何だか馴染めない用語が多くて空々しい感じがするのは僕だけだろうか。
ヒロインは、裕福ではないけれど元気いっぱい、背筋を伸ばして暮らしているキュートで頑張り屋なコナガール。ハワイの明るい陽射しあふれた南国の風景を織り込みながら進んでいくストーリー。それ自体は従前どおり、とても好きな世界なんだけど、コンペのシーンに至るとスピードダウンしたように覚めてしまうのだ。
そうか・・この失速感が物足りなさを感じる原因なんだろう。喜多嶋さんは、ゴルフ小説という新境地を拓きたかったのかもしれないけど・・僕にとっては今一つ残念な本書でありました。
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「春のオルガン」 湯本 香樹実(著) [Books]

organ.jpgあらすじ---きのう小学校を卒業した。今日から春休み。でもなんだか私の頭はもやもや。隣の家との争いが原因で、家のなかもぎくしゃく。ひょろひょろ頼りないやつだけど、私の仲間は9歳の弟のテツだけだ。私たちはいっしょに家の外を歩きはじめた。小さな沼。広い空の下の川原。ガラクタ置場でのら猫にえさをやる不思議なおばさん。そしてある日、私たちはもう家に帰らないで、捨てられた古いバスのなかで暮らそう、と決めた・・・。十二歳の気持ちと感覚をあざやかにていねいに描き出した物語---。
小学生以上~中学生未満の十二歳。それほど子供じゃないけど、大人でもまったくない。中途半端というか身分不明瞭というか、そんな時期って、どこにも所属していない自分に戸惑ってしまった覚えが僕にもあります。でも、かえって気分が高揚して行動的になって、普段は見落としていたことに気付いたり、後回しにしていたことに実行してみたりして。
主人公のトモミも、そんな時期にいます。大人になって振り返ってみると懐かしいような・・でも、直面しているときはジレンマと歯痒さにもやもやチリチリしてしまう、大人への脱皮直前の頃です。
感想と言っても、正直、捉えどころが難しいストーリーだったので明確には語れないのですが、そんな茫洋とした感じこそ、この小説の味付けなのかもしれません。
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「マダム小林の優雅な生活」 小林 聡美(著) [Books]

madamek.jpg家事全般をひきうけながらも、一歩外に出れば女優という職業婦人である、そんなマダム小林の日常は、慎ましやかだけど、なぜだか笑える事件続出!
我が年代であれば「転校生」や「やっぱり猫が好き」でお馴染み、コアラ似^^のアクトレス、小林聡美さんのエッセイです。でも、タイトルの"優雅な"というセンテンスには期待するなかれ。かなーり笑劇的な徒然日記なのです、これが。
しかしまぁ・・世の中には、かくもマダムの心を乱す(=ムカムカさせる)外的要因が多いことか。慇懃無礼でしつこい勧誘、大切な植木に群がるアブラ虫、名物料理と称して出てくるレトルト、大事なものを狙ってそそうする猫たち、他のタレントと勘違いされてねだられるサイン・・etc。
でも、それらムカツキの本質をしっかと見据えて、その場で正しく怒って考古の憂いなく発散し、カラリと笑い話に変換する。そんな自然体かつポジティブなマダムの日々を知るにつけ、「世の中って、まんざらでもないのかも」と、救われたようなお気楽な気分になれました。
それにしても、くだんの「勘違いサインねだられ事件」でのマダム・・はいはい♪って微笑みながら「海老名美どり」って書くなよー・・くふふ^^ カッコよすぎです。
そして、ときどき・・いや、かなり頻繁に登場する「夫」、すなわち映画監督のMK氏。これまた突っ込みどころ満載のお茶目な言動を連発してくれるのです。それもツボにはまりましたさ^^
さても、チャキチャキっパキパキっとしながらも可愛らしい文章で綴られた、ほんとうに楽しいエッセイです。これからもヘビーな小説を読んだ後にはマダム小林の本を読んで、リフレッシュ&リセットしようと思っている次第です。
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「ワイルド・ソウル」 垣根 涼介(著) [Books]

wildseoul01.jpg ブラジル移民」という言葉は聞いたことがあっても、知識が全く無かった。本書を読んで実体を知って、文字どおり腹の底から煮えくり返るような憤怒にいたたまれなくなった。
今から50年ほど前・・日本国政府が大々的に展開した「楽園ブラジルに移住して農園主になって一旗上げよう!」キャンペーン・・その本質は、戦後の極端な物資不足に即した国家主導の口減らし政策だった。
パスポートを取り上げられたうえで未開拓のアマゾン奥地に放り出され、蔓延する疫病と飢餓で次々に家族を失い、男は乞食に、女は街娼にまで落ちぶれながら、無念を抱いて土塊へと還っていった無数の人々がいたのだよ、実際。これが、ほとんど事実だってんだから、開いた口が塞がらないってもんだ。
さて、ここからはフィクション。辛酸を嘗め尽くしながらも生き地獄から這い上がり、何とか起業して成功することができた、かつてはブラジル移民だった老人。幸せに余生を送っていた彼だが、本人も気付かない心の奥底には過去の怨念が燻っていた・・。そして、ある事件をきっかけに復讐の業火が燃え上がる。
「異郷の土となった者たちの怨嗟の声が、貴様たちには聞こえるか。」
大詐欺師の権化、極悪非道の巣窟である日本国外務省へ、今、覚醒した怒りが三百発の弾丸と化して叩き込まれるっ!
文庫では、上下2巻組みの本書。上巻は、ブラジル移民の史実と老人が復讐に至るまでの経緯~下巻は、復讐への綿密な助走と痛快なる実行、そして顛末・・という流れ。繊細な人物描写、きめ細やかな風景描写、さらにスピード感が相まった文章に、あっと言う間に飲み込まれて目が離せなくなり、物語に運ばれて翻弄されて、最後は突き抜けるような爽快感と共に読了したのだった。
僕は、クライムもの、テロリズムものでは、どんな事情があろうとも加害者側には感情移入したことが無かったのに、本書では、「やっちまえぇ!ぶっこわせぇ!!いいぞいいぞぉ♪」と、心から応援してしまったぃ^^;
うむむ、読み終えてしまったのがもったいないくらい。本書は間違いなく、お気に入り本のベスト10にランクインしますな。
wildseoul02.jpg

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